近年子どもの近視が増えており、世界的な問題となっています。近視になることで、将来緑内障や網膜剥離(軽度近視で3-4倍、強度近視では10倍以上)などの目の病気にかかる危険が増します。発症が低年齢であるほど進行は早く、一般的に17歳ごろまで進みます。低学年発症では将来強度近視に至ることが予測され、特に対策が必要です。
近視の予防には屋外活動を増やすこと(目標は1日2時間)が最も重要です。実際いくつかの国では、学校の休み時間に外で遊ぶことを義務付けています。建物の影や木陰でも、近視予防に十分な照度が確保できます。熱中症や紫外線の悪影響もあるので、木陰で過ごすといいでしょう。
近くを見る作業が増えると近視が進むことが分かっています。30cm以上離すこと、30分に一度は遠くを見ることが重要です。子供がスマホを使う場合、腕が短く30cm離すことが難しいと思われます。大きいモニターを用いて離して観ることを推奨しています。
子どもたちの視力を生涯に渡って保つため、子供のころから予防に取り組みましょう。
ブルーライトに関する質問をされる機会がここ最近増えており、関心が高まっているものと思います。正しい理解と対応が必要と思い、分かる範囲でお伝えしようと思います。臨床データとして明らかにされていることは、以下の3点です。まず1つ目は睡眠の質に悪影響があることです。翌日の健康状態や活動能力が低下するため、睡眠前の使用制限は必要と思われます。2つ目は、液晶画面を見続けることにより起こりうる目のかすみや疲れです。長時間の連続使用は避けた方がいいでしょう。3つ目は、将来的に網膜疾患の発症リスクとなる可能性があることですが、これに関しては長期間の研究データがないため詳細は不明であり、今後の研究が待たれます。
一方で、米国眼科学会(AAO)は2018年8月「ブルーライトを発するスクリーンを長時間見続けても、永続するダメージが目に及ぶことはないだろう。」と明言しており、行き過ぎた噂が先行しているため冷静になるように促しています。少なくとも、ブルーライトにより近視が進行したり目が悪くなるとの明確なデータは一切ありません。睡眠前の使用や長時間の連続使用が問題になるのであって、学校の授業で使用することによる目への影響はほとんどない(無視して良い)ものと思います。ブルーライトカット器具の使用に関しても、「望ましい可能性はあるが、必須とまでは言えない。」と考えています。
左右どちらかの目が内側に向いてしまう「急性内斜視」が、近年若者(10~20代)を中心に増えています。近くを見る時は眼球を内に寄せて焦点を合わせます。スマホはパソコンや読書よりも目に近い位置で画面を見るため、近くを見る作業が過剰になりやすく寄り目の状態が固定してしまうのです。遠くを見ても寄り目の状態が戻らなくなり、両目の視線が一致せず物が二重に見えるようになります。
対策として画面を目から30cm以上離すこと、30分に1回は3~4メートル離れたところを見るようにしてもらう。改善しない場合は特殊な眼鏡(プリズム眼鏡)を試してもらう。それでも駄目な場合は注射や手術となります。生活習慣を見直すことで改善するものと考えられていましたが、手術を要することが予想以上に多いことが分かりました。小児の手術となれば全身麻酔が必要となり、いろんな危険を伴います。それだけに予防に努めることが大切です。前述した適度に距離を離す工夫として、同じ作業をするにしてもスマホよりはタブレットやパソコンで行う、また近視の眼鏡を持っていれば裸眼よりは眼鏡を装用して行うことも有効です。
便利で生活から切り離せないアイテムであるスマホを、安全に活用してもらいたいです。